去年の春のお話
いつもの日常。「ただいま~」と仕事から帰ると、妻がひとこと「おかえり」と告げる。いつもの光景だ。末娘は、布団のすみっこでスマホにかじりついている。
当然お帰りの声は聞こえない。ホント、親の顔が見てみたい。
妻に近づいて話をしていた時、僕は心臓を刺された。切れ味鋭い言葉のナイフが突き刺さった。
「ねえ、最近あんた口臭いよ」
クチクサイヨ、クチクサイヨ、クチクサイヨ、クチクサイヨ・・・
心の中で、エコーのように響き渡るクチクサイヨ。膝をついて倒れそうになったが、なんとか持ちこたえた。
いつものことではないか!たれ妻は、言葉のナイフの使い手だろうよ。
でもちょっと待てよと。これまでずっと僕のことを口の臭い旦那と見ていたということか。もしかしたら、僕が傷つくことを覚悟で意を決して言ってくれたのかもしれない。
いつもそうだ。妻はそんな素振りは見せない。内心、僕の体調を心配しているのかもしれない。心臓に刺さったナイフを抜きながら、僕は決心をする。
ひとまず口内衛生のために歯医者に行こうと。人は痛みを伴わないと動かない、こんな時に妻の言葉のナイフが大いに役立つ。
そんな生死の間際で戦っている僕を横目に、末娘はスマホを見ながら笑っている。応急処置は、自分で施せよということだろうか。
早速、歯医者に電話をすると予約は最低でも1か月後であった。確かにいつ行っても多い歯医者である。予約しても1時間ぐらい普通に待たされる。
予約とは直ぐに案内されるものじゃないのか?ということを待合室で考えさせられる歯医者。これも戦略なのだろうか?
そうこうしていると、ようやく名前が呼ばれる。いよいよ、歯の点検、口内のお掃除が始まった。
お掃除からずいぶん期間が空いていたので、少しずつキレイにしていくようだ。でも、その時思った。歯科衛生師さんに申し訳ないと。
おじさんの汚れた口の中を掃除するのは、仕事とは言えやりたくないだろうと。これはしっかりと続けてキレイな状態で通院しないといけない。
僕は、親知らずが4本残っている。この親知らずは手入れが難しいらしく、いつも手こずっているのが分かる。
あの手この手を使って、4本の親知らずをなんとか磨いてくれている。
毎度、歯科衛生師さんが変わりながら手入れしてくれる中で、そのたび親知らずの抜歯を勧められるようになった。
「親知らずが4本あるんですね。これは抜歯したほうがいいですよ」
耳にタコができるとはこのことか?といぐらい、毎回同じ文言が繰り返される。マニュアルでもあるのか?
よっぽど、邪魔なのだろう。僕としては痛くもないので、そっとしておいてほしいと思っているのだが、来る人、来る人、みんな揃って親知らずを抜けを繰り返される。
ここは、親知らず撲滅委員会か何かに加盟でもしているのだろうか?と思うほどだ。
委員会のマニュアルに書いてあるということではないのか。
僕の4本の親知らずからしたら、必死に僕の口の中で役割を全うしているわけだ。よっぽど虫歯で痛みがあれば抜歯も考える。
でも、僕の本能が4本の親知らずを守り抜こうとそう決めているのだ。譲るわけにはいかない。
するとついに、親知らず撲滅委員会が裏の手を使ったのか次の一手を打ってきた。見たところ70歳ぐらいのベテランの先生を僕の元へ投入してきたのだ。
そうか!この人が委員長かもしれない!ついに委員長まで投入して、僕の親知らずをかっさらっていこうというのか!
僕は口を大きく開けながらも、一歩も引かない姿勢をとることを心に決めた。その直後、やっぱりきた!
「たれさんねえ、親知らずがあるでしょ?これ抜いたほうがいいですよ」
はいきた!めっちゃ直球!その手にはのりません。いくらあなたがこの仕事50年のベテランであっても、僕の親知らずは僕のものです。
委員長は話を続ける。
「僕もねえ、あったんですよ親知らず。」
ほほう、さすが委員長だ。親知らずの思い出話でも話でも始まるのか?それとも、共感を誘う作戦か?
それでも、僕の意志は揺るがないぜ!どれだけ僕の気持ちに寄り添ってくれたとしても、親知らずだけは譲れない。抜かすわけにはいかないんだ。
さらに話を続ける委員長。
「いつだったかなぁ・・・
65歳の時に抜いたかな。」
うがいのお水を吐き出しそうになりながら、心の中で静かに突っ込んだ。
最近かい!めっちゃ最近やないかい!
65歳までもつのね!けっこう頑張るね親知らず!と
そこは、嘘でも40歳のときぐらいにしとけば、僕の心も動いたよと。
そして、できるものなら65歳まで親知らずを守り抜きたいと心に誓った。
どんな手で親知らずを狙ってくるかわからない恐怖に怯えながらも、今でもその歯医者に通いながら親知らずを守っている。継続的なお手入れを続けているのだ。
お口の衛生も継続が大事ということだろう。それからというもの、妻からの「口臭い」はなくなりました。
そして、ひとことこういわれました。
「臭わなくなったね。」
ニオワナクナッタネ、ニオワナクナッタネ、ニオワナクナッタネが僕の心でこだまする。ああ、よかった歯医者さんに行って。
ただ僕は知っている。あなたが半年もの間、歯医者に行きそびれていることを。
ここからは僕のターンだ!と言いたいところだが、「口臭い」なんて到底言えない。だから紹介しよう!親知らず撲滅委員会に加入済みの歯医者さんを。
そして、将来へ向けてお口の健康を保っていこうではないか!
最近、末娘の歯が2本抜けた。スマホをみながら笑う笑顔がなんとも間抜けである。
親の顔が見てみたい



おっと!親知らず抜いたから匂いが消えたのかと妄想してた。ケアが大事なのはわかってる。私はケアする歯がないので大丈夫か〜と思った記事だった。私は40で総入れ歯だから、おすすめだよタレメるんるん。臭いって言われないぜ! あ、今度入れ歯の記事書こうっと。
言葉のナイフの使い手でしたかw
私は前歯痛くて歯医者行ったのに、親知らずが腐りかけてますねと言われすぐ抜かれました🥲