黒赤ののれんをくぐると威勢のいい声が聞こえてくる。
「はい、いらっしゃーい!」
本来真っ赤だったはずののれんは、油と年期によって黒味の方が強くなっている。この場所で地域に根付いてきた証のようだ。
「町中華」は、店主のおっちゃんやおばちゃんが代々その土地で地域の腹を満たしてきた場所だ。
特別な素材なんて使われていない。その地で取れた野菜や国産かもわからないお肉。大きな中華鍋を振るう店主の額には汗がにじみ出ている。
カウンターの椅子に背もたれなんてあるはずがない。背筋を伸ばして食べろってことだろう。座敷?油のしみ込んだ畳に薄っぺらい座布団が敷いてあるのがデフォルト
どこの町中華に行っても、たいして変わらないメニュー表。商店街の仲間に借りたラミネーターでコーティングされた裏表で十分事足りるメニュー数だ。
もちろん、壁にもメニューは書かれている。メニュー表との整合性がないこともしばしば。どっちの金額が正しいのかも分からない。
だが、それがいい。これぞ町中華である。
僕は、こんな伝統と味のある町中華が好きだ。その土地に愛された味はどんなものなのか?とても興味がある。
大して多くないはずのメニューにいつも迷ってしまう。背もたれのないカウンターに座って、ペラペラのメニュー表を何度も見る。
この時間も含めて、ワクワクが止まらない。
最近行った町中華の話
その店は、車で1時間ほど走らせた場所にあった。中心部から少し外れてはいるが、人や車通りも多かった。町中華の弱点は、駐車場がほとんどない。
昼前についたものの既に駐車場はいっぱいで、近くのコインパーキングに止める。止めれないのは残念だが、お客さんが入っていることは期待感にも繋がっていく。
今日は、どんな味と出会えるのだろうか?
きたなシュランにも十分認定されそうなたたずまい。港区女子は絶句するだろうか。僕は例の背もたれのないカウンターへ座り、オーダーに悩む、悩む、悩む。
僕がサシャのような食いしん坊だったら、片っ端から頼みたいぐらいだ。
最終的に2択で悩んでいる。中華丼にするか、炒飯にするか。
「せいぜい…悔いが残らないほうを自分で選べ。」というリヴァイの言葉が重くのしかかる。
本当は、麻婆豆腐も気になるし、唐揚げも食べたい。でも、おなかいっぱいになって身動きできない未来が見えている。
と、メニュー表を置いて壁に貼られたメニューを見ていると・・・
『あんかけ炒飯』が目に入った。
これは!!!僕が食べたかった中華丼と炒飯のハイブリッドではないか。なんと贅沢な食べ物だろうか。
迷わずあんかけ炒飯を注文すると、威勢の良い声が返ってきた「あいよっ!」
店主のおっちゃんが、中華鍋を勢いよく振るう。ジュワーという音共に、炒飯がパラパラになっていく。
見ているだけでよだれが出てきそうである。そこにアッツアツのあんが掛けられて「はい!お待ち!」の声と共に届いた。
あんかけ炒飯からもくもくと立ち上がる湯気が熱さを物語っている。早速、ハフハフしながら口に運ぶと、熱くて味も分からない。
町中華の料理の圧倒的な火力と中華鍋の熱伝導にいつも驚かされる。
ここからはとどまることを知らない。ただひたすら、口に運ぶ。口の周りが汚れようと関係ない。平らげた時は終了の合図だ。
あんは、少し塩分が強い感じもしたが、これがこの町の味ということだろう。
大満足のまま、900円の会計を支払う。キャッシュレス決済なんて言葉は、町中華には存在しないのだ。
混ぜるな危険とは書いていない
帰宅後、妻にあんかけ炒飯に出会えた奇跡を話した。中華丼と炒飯が食べたい僕にとっては、救世主であったと。最高にうまいあんかけ炒飯というものがあるんだと。
だが、妻は僕を残念そうに僕を見ている。
あなたは、あんかけ炒飯に心臓を捧げたのかと
「炒飯は炒飯、中華丼は中華丼、あんをかけるならせめて焼きそば」
ということだった。いいとこどりしようなんて、所詮妥協じゃないかということだろう。
僕はハイターじゃあるまいし、混ぜてもいいじゃないかと反論した。わたしはあり得ない。麻婆豆腐をご飯にかけるのすら許せない。かつ丼はどうなんだ?と言いたか・・・
ということだった。僕のあんかけ炒飯への想いは妻の思想によって、完全に地ならしされたのだった。
町中華とサブスタック
町中華のお店に行くと、どこも雰囲気はとてもアットホームである。常連さんと店主さんが楽しそうに話していたり、初顔のお客さんに対しても温かい店が多い。
中には癖のある店主もいるが、きっと味がある人なんだろう。
ファミレスやチェーン店が増える中、親しみや味わいが残る町中華は人間らしさを感じる場所だ。だから僕は町中華が好きなんだと思う。
サブスタックも同じように人間のぬくもりを感じる交流ができる。人となりを知れる記事を読むことができる。血の通った関係がある。
どこか町中華とサブスタックに共通点を感じていて、心地よさがそこにはある。
これからサブスタックが繁栄していくことを確かに望んでいる。
でも一方で、町中華のように親しみのある場所として存続してほしいものだ。
町中華の店主がその土地に合った料理を提供するように、あなたの土地ならではのお話や景色をぜひ交流を通じて感じ取りたい。
最後に、町中華翌日の朝食は麻婆丼だった。




全部、面白かったのですが
最後の一文にもやられました🥹
人間って矛盾してる生き物ですよね🫣
奥様の容赦なさがツボです😂
たれめるとさん🌸
ハイターでもあるまいし混ぜるな危険…の下りで、めちゃくちゃ笑いました♡
やーん♡とってもおいしそうです!!!